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猫のいる風景 nostalgia 【RD】 


2009.03.16
Mon
22:13

  SSなど

先週末は他の用事で消耗し過ぎてしまい、HARUコミに行けませんでした…。

かなり悔しかったんで、書きかけのSSを仕上げてみた。
今回は、ホワイトデーの空気をまったく読んでいません。

そして久々にイベント絡みじゃない話のせいか、
ほのぼのを目指したはずがシリアス寄りな内容になってしまいました。
基本は13話の過去エピソードとか、
12話の仕事なんだか遊んでるんだか微妙な4人@事務所から
イメージしたネタなんですが。


そのほかの注意点としては>
・各キャラの犬/猫派っぷりを直感で捏造しちゃいました。
・一部ハルさんが後ろ向きというか、いじけモード入ってます。
・ミナモ初書きのご祝儀(?)により、見ようによってはハルにゃもっぽいかも?
(話自体のメインは、いつものごとく波留と久島の2人です)


以上を了解してくださる方は、どうぞー↓




電理研の敷地内には、いつからか1匹の猫が棲みついている。

ふらりと迷いこんだのか、所員の誰かがひそかに連れ込んだのかは判らない。
どちらにせよ、そこそこの広さがあるスペースでは邪魔になるわけでもなし、
日々の業務に疲れた研究員たちの心を癒すアイドルとしての地位すら
最近では確立しつつあった。

なにを隠そう、波留自身も数多いファンの1人だったので
腹ごなしに外へ出たら現れた猫を、ひとしきり構っていたところだった。
天気がいいせいか、それとも昼食の残りでも分けてもらって満腹なのか、
彼氏(初対面でチェック済み)は怠惰に寝そべり前足だけの反応をよこす。

「なんだ、おまえも猫愛護派の一味か」

ふいに頭上から影が差し、一拍遅れて聞きなれた声が降ってきた。
わざわざ確認するまでもない相手だったので、視線を猫に固定したまま応じる。

「『一味』なんて表現はよしてくれよ。
 久島、もしかして猫嫌いだったのか?」
「べつに好きも嫌いもないし、アレルギーというわけでもない。だが、職場にペット
 というのはどうなんだ。まさか今どき、ネズミ捕り要員でもないだろう」
「はは──まあ、そこらへんを突かれると痛いところだな。
 でも、こんなご時世だからこそ職場に潤いが必要なんじゃないか」
「……猫1匹が、か?」

友人であり上司でもある男は、相変わらず背後につっ立って疑わしげだ。
──愛玩物を職場へ持ち込むことに抵抗があるのか、
  それとも単に猫への関心が薄いだけか。
なんとなく、理由を探ってみたくなって波留は振り返る。

久島は白衣ではなく、ブリーフケースを提げたスーツ姿だった。
どうやら外出から戻ったところらしい。
役職付きになると外部との会合やらでかり出され研究もままならない、
だから陸と切り離されて調査に没頭できる時間は貴重なんだ──
などと、船上で苦笑まじりにこぼすのを聞いたばかりだ。

南海の日差しを浴びても色素の定着しない肌に騙される輩も多いが、
いたって現場主義の久島にしてみればストレスの溜まる状況と見えた。
猫なら、せめてもの鬱屈解消に手ごろじゃないか。

「おまえさ、ペットを飼ったことある?」
「私個人というわけじゃないが、実家では以前犬を飼っていたな」
「なんだ。久島は犬党だから、猫に興味がなかったのか」
「犬党……?」
「そう、」

首をひねる白皙の眼前へ、大の字になった猫を掲げてみせる。

「たいていの人間は、犬党と猫党とに分けられるんだとさ。
 久島は猫党じゃないから、こいつを見てもピンと来ないんだよ」
「どうも大雑把な説に思えるが……とすると、おまえは猫党ということか」
「まあ、そういうことになるかな」

不安定な姿勢を嫌がり暴れだす猫を下ろしながら付け加える。

「──昔、まだ東京に住んでいたころに……」
「猫を飼っていた?」
「いや、家でじゃない。なぜか町内に猫が多くて、
 近所のどこへ行っても姿を見かけてたんだ」
「首都・東京にも、そんなのどかな風景があったとは意外だ」
「下町だったからな、あちこちに古いものが残ってたよ。放課後は友達同士、
 日が暮れるまで遊んだり。……たしかに、『東京』ってイメージじゃないか」

失われた故郷で、まだたいした憂いも知らず走り回っていた幼い日々。
──もしかしたら自分にとって猫は、懐かしい過去の象徴なのかもしれない。
ふと感傷的な思いにとらわれた。

「なるほど。古きよき街角には猫が似合うかもしれないな。
 ところで、そっちは無体な仕打ちに逃げていくぞ」
「……ああ。ま、気まぐれも彼らの特質さ」

ぐんぐん遠ざかる猫の背を見やり、うそぶいて立ち上がる。

向き直ったら、思いがけずいたわるような淡い視線とかち合った。
何事かと問いかける間もなく、久島はそれを笑みにまぎらわす。

「そうだな、ある種の職員に猫がもたらす効用は理解できたので、
 今後目くじらを立てずにおくとしよう」
「理解してもらえてよかったよ。俺の場合、いっそ飼うって手もあるんだけどな」
「なんだ、検討していたのか?」
「するにはしたけど、やっぱりウチで飼うのは難しいだろ」

調査航海や研究所への泊まり込みで頻繁に部屋をあける
一人暮らしの身で生き物を飼うのは、躊躇が先に立つ。
結局、職場で時々癒されるくらいがちょうどいいのだろう。

「──いつか、環境が整ったときの楽しみにとっておくさ」
「ふむ。人生設計としては野心が少なすぎるが、
 かえってハルらしいかもしれんな」

猫の消えた先を眺めながらつぶやくと、
穏やかな同意とともに右肩をかるくたたかれた。

なんだか、お節介を焼くつもりが逆にカウンセリングでも受けたような気分だ。
波留は照れくささを持て余し、よく晴れた青空を見上げた。





──それから、ざっと50年余り。
はたして自分の住居兼事務所には、1匹の猫がいる。

気ままに動き回り野生のしなやかさを留めていた、記憶のなかの
彼らとはかけ離れた巨体なのだが、猫であることに変わりない。
抱え上げれば、やはり骨の存在すら覚束ないほどにやわらかな躯だった。

これもまた、数えきれないほど多く与えられたのと同じ
友人の配慮の賜物なのだろうか。
海へ向けて大きく切り取られた窓から射し込む、強い光で
自然と細くなる目をふと流した。

「どうした、シュレディンガーが重くなったか?」

ずいぶん打ち解けてきたとはいえ、珍しく少女のほうから持ちかけた
相談に付き合っていたはずの久島が、振り返って尋ねる。
すかさず、脇から伸びた秘書兼介助要員の腕が猫を連れ去った。

自分をマスターと認識するアンドロイドよりも
視線に敏いところが、なんとも彼らしい。
見知ったままの容貌とも相まって、どうかすると空白の50年など
性質の悪い冗談と錯覚してしまいそうだった。
──この老いた肉体さえ、意識の埒外にできたらの話だが。

「……いや、そんなことはないよ。
 むしろ、猫の抱き心地を懐かしんでいたところなんだけどな」
「それは早とちりで失礼した。だが、いずれにしろ程々で解放してやるべきだろう。
 気まぐれこそ、猫の特質なのだから」
「やはり、きみは──」
「ああ、猫はそういうところありますよね!
 犬だと気持ちを読まれてるんじゃないか、ってくらい
 遊びたいときは寄ってきて、忙しいときには離れててくれるのに」

──あのときの話を覚えていたのか。
  あんな、なんでもない出来事を……?

昔話した内容をなぞるような友人の発言に思わず問いただしかけたが、
無邪気な感想でかき消された。
──だが、それでよかったのかもしれない。
久島はなんと答えるのか、どんな答えを期待して聞くというのか。
あらためて自問すると子どもじみた衝動で、言ってもすぐに後悔するだろうから。

彼であれば、波留の思考を読んだうえで真っ向から応えてくれるのは疑いない。
そこには生来の誠実な人柄に加え、経験を重ねた者だけにもたらされる
余裕がすけて見えるような気がした。

外見と、内面の充実度が一致しないという点において
波留と久島は状況を等しくしている。
しかし、その意味するところには大きな落差があるはずだ。
青年の器に老練な魂を宿す友人と、ただ時をへた身体に
未熟なままの精神がひそむ自分との間には。

「はず」というだけで、再び親しく言葉を交わすようになってから
友人としての久島には隔たりを感じたことなどないのだが、
むしろ感じさせない努力をさりげなく行使しているゆえではないかと勘ぐってしまう。
変わらぬ態度を貫いてくれる心遣いへ感謝する気持ちは偽りないのに、
時々わき起こる焦燥感はどうしようもなかった。



波留の物思いをおきざりに、祖父と孫ほど離れた2人の会話は続く。
一見かみ合わないようで、その実なかなか弾んでいるようだ。

「そうか、ミナモさんも犬党だったか」
「い、犬党!? よくわからないけど、
 飼うならやっぱりダップーみたいな犬がいいなあ」
「その発想こそ、犬党ならではだな。
 ハルに言わせれば、大方の人間は犬党と猫党とに分けられるらしい」
「へえ、そうなんですか。
 あ! じゃあ、ハルさんはどっちなの?」
「──え!? ああ、そうですね……それほど自覚はないのですが、
 どうやら私は猫党のようです」
「そっか。だから久島さんは、シュレディンガーを連れてきたんですね」

──ああ、そうか。
素直な目線でも、やはりそう見えるのか。
いつものように、おそらく本人は感じたままを口に上らせただけなのだろう。
真っすぐなミナモの一言は、だが確かに波留の心を軽くした。

久島ははっきりと判る笑みをうかべ、無言で正解の意を示している。
──ならば、もうそれでいいじゃないか。
悩んだところで、負のスパイラルに陥るのが関の山だ。
50年以上も前になにげなくもらした言葉を覚えていた人が居て、
押し付けがましさのない形で表現してくれる。

(まるで奇跡のような幸せだ、ぼくはそれをありがたく受け取ろう)
「──ホロン、お茶を淹れてくれないか。
 シュレディンガーはもういいから、放してやりなさい」
「はい、マスター」
「あ、私も手伝う!
 ホロンさんに、おいしい紅茶の淹れ方を教わりたいの」
「承知しました。
 ではミナモさま、行きましょうか」
「はあい」

連れ立ってキッチンへ向かう女性陣を見送った久島が振り向いて、

「淹れ方といっても、もとはおまえの流儀なんだから
 直々に教えてやればいいだろう」

合理性を尊ぶ彼らしい意見を述べる。

完璧に整ったかに思える人工島の生神にも、かつてを偲ばせる
融通の利かない面があると知らされて妙に嬉しくなりながら、
波留は肩をすくめてみせた。

「そういう問題じゃないのさ。
 ミナモさんにとっては、ホロンから習うことに意味があるんだよ」
「……ああ。どうやら、彼女はホロンに『ホロン』という一個の人格を
 認めているようだな。なんとも得難い才能だ」

しみじみ頷く久島の足元に、シュレディンガーがうっそりと近付く。
波留の予想に反して、友人は無関心だったはずの猫へ手を伸ばした。

「──驚いたな、」
「うん?」
「まさか、きみが猫を構う姿を目にする日が来るとは思わなかった」

正直に告げると、冗談めかした応えが返ってきた。

「これで犬党、猫党の色分け論は撤回してもらえるかな。
 まあ……50年あれば猫にだって興味もわいてくるさ」
「そういうものか」

──もしかしたら。
昔、自分が海へ沈んだ故郷を重ね合わせたのと同じように、
友人は猫に対して懐かしさを覚えたのだろうか。

唐突に、ある推論がひらめいた。
まるで脈絡のない考えなのに、直感が事実から遠くないはずだと伝えている。

今はもう、そんな想像も痛みを伴いはしなかった。

  




…こんなことを書いてる私自身が犬党なので、
猫の魅力を表現しきれませんでした。。。
ごめんよ、シュレディンガー!
紅茶の淹れ方については、波留→久島→ホロンのルートで
伝授されたという設定を捏造しています。

thread: RD 潜脳調査室 / genre: アニメ・コミック

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